Part2 Repeat「復唱」に関する事実の整理
日本語公式サイトの記述の確認
下記が日本語公式サイト上での当セクションに関する記述となっています。
音声で流れた文章を聞こえた通りに繰り返すことで「発音」「流暢さ」「文章構文」を診断
設問数は16問ですが、最初の1問は練習問題の扱いのため、採点対象とはなりません。
英語の「Validation Report」上の記述
『Validation Report」からの該当部分の引用
以下に引用します。
In this task, candidates are asked to repeat sentences that they hear verbatim. The sentences are presented to the candidate in approximate order of increasing difficulty. Sentences range in length from three words to 15 words. The audio item prompts are spoken in a conversational manner.
To repeat a sentence longer than about seven syllables, a person must recognize the words as spoken in a continuous stream of speech (Miller & Isard, 1963). Highly proficient speakers of English can generally repeat sentences that contain many more than seven syllables because these speakers are very familiar with English words, phrase structures, and other common syntactic forms. If a person habitually processes five-word phrases as a unit (e.g. “the really big apple tree”), then that person can usually repeat utterances of 15 or 20 words in length. Generally, the ability to repeat material is constrained by the size of the linguistic unit that a person can process in an automatic or nearly automatic fashion. As the sentences increase in length and complexity, the task becomes increasingly difficult for speakers who are not familiar with English sentence structure.
Because the Repeat items require candidates to organize speech into linguistic units, Repeat items assess the candidate’s mastery of phrase and sentence structure. Given that the task requires the candidate to repeat full sentences (as opposed to just words and phrases), it also offers a sample of the candidate’s fluency and pronunciation in continuous spoken English.
引用部分のポイント
第1パラグラフ:設問の形式
②文章の長さは3語から15語の間。
③設問文は会話時と同様の口調で読まれる。
第2パラグラフ:「復唱」という形式をスピーキングテストに採用するVERSANTの自己正当化
AIによるスピーキング能力のテストというのは非常に新しい試みなので、VERSANTはこのテストがスピーキングテストとして相応しいということを、Validation Report内の随所で述べています。
上記を私なりに解釈しますと、VERSANTとしてはこのテストは決して「記憶力」勝負ではなく、5語以上の単語を自動的に処理できる能力が備わっており、英文構造に十分な馴染みがありさえすれば、短期記憶容量とは関係なく、20語前後の文章であれば、容易く復唱できる、と言いたいのだと考えます。
第3パラグラフ:評価項目との対応
当セクションの結果は、「発音」「流暢さ」「文章構文」の採点に用いられます。
受験体験から得られた知見
②長い語数のものが覚えづらかったのも確かだが、自分自身で言い慣れていない言い回しが含まれていると、復唱が困難だった。例えば「think things through」という言い回しは自分で使ったことがなく、「th」音が繰り返されることもあり、言い淀んでしまった。
③逆に語数が多くても、自分にとってシンプルに感じる文構造のものは、それほど困難を感じなかった。
当セクション得点向上のための対策
当セクションでもリスニングスキルは必須ですが、リスニングスキルは他のセクションでも幅広く必要となるため、別記事にてリスニングの対策は記述致します。当記事では、リテンションに絞って対策を検討いたします。
まず、「リテンション」とは何かを知る
さて、最近は様々な英会話スクールで通訳訓練技法が採り入れられているようですが、VERSANTの「復唱」と同様のことを、トレーニングとして実施された方も少なくないのではないでしょうか?実はVERSANTの「復唱」は、通訳訓練技法の1つ「リテンション」あるいは「リプロダクション」として、広く知られ、また実践されているものです。
リテンションは通訳訓練技法の1つである
通訳訓練技法については、ネット上で公開されている、染谷泰正先生の「通訳訓練手法とその一般語学学習への応用について」という文書が、非常に示唆に富み、かつ分かりやすくまとめられています。そのうち、リテンションに関する部分を以下に引用致します。
「リテンション=リプロダクション」は、通例、通訳者に必要な「短期記憶容量」を増やし、あるいはその能力を強化するためと称して行われているもので、あるセンテンスを聞いて、これを一時的に記憶 (retain)し、ただちに原文をそのまま再現 (reproduce) させるという訓練です。普通は、まず10語から15語程度の短いセンテンスから練習を始め、 次に20語から30語程度というように、だんだんと負荷を多くしていきます。
多くの通訳訓練学校では、短期記憶容量を増やすという目的で、リテンションが採り入れられているとのことですが、染谷先生ご自身は先程の引用部分の直後において、①本当に短期記憶容量を増やせるかどうか疑問であり、②仮に増やせたとしても、通訳者としての能力になんら関連性がない、と述べられておられます。(ご興味のある方はリンク先文書にてご確認下さい。)
リテンションとシャドーイングの違い
サッカーの本田選手がシャドーイングを実施していると紹介した某英会話学校のCMがあるくらいなので、リテンションは知らないけど、シャドーイングについては知っているという方も多いのではないでしょうか?そして、リテンションとシャドーイングはなんとなく似ているけど、どこが違うのかピンとこない、という方も多いのではないでしょうか?染谷先生は両者を以下のように整理されています。
②リテンション=リプロダクション [= 逐次リピーティング]
リテンションは英語で1文読まれた後に繰り返すので、「逐次」リピーティングですが、シャドーイングは文が完結するのを待たず、数秒遅れてひたすら復唱でついていくので、「同時」リピーティングなのです。
シャドーイングをやっていれば、自然に「復唱(リテンション)」ができるようになるのか?
さて、シャドーイングについてはCMで出るくらいポピュラーなので、ご自身の取り組みとして継続されている方もいるかもしれませんが、では、シャドーイングをやっていれば、復唱も自然とできるようになるのでしょうか?
この問いに対する私の考えですが、リテンションができるようになるためには、リテンションそのものの訓練を行う必要があると考えております。まず、私自身ですが、シャドーイングはかなり得意な方だと思います。シャドーイングでは、音の聴取と、それを聞いた直後に英語で発音できればよいのですから、必要とされる短期記憶容量は微量で済みます。シャドーイング(同時リピーティング)とリテンション(逐次リピーティング)は必要とするスキルが異なると考えています。
また、一定数の方のシャドーイングとリテンションのパフォーマンスを拝見する機会がありましたが、両者のパフォーマンスの間に相関関係があるとは思えませんでした。私と同様に、シャドーイングは得意だが、リテンションになると途端に精彩を欠く人、また、いきなりリテンションをやらせても、10語程度の文章でもすらすらできる人等、様々なタイプの人が観察できました。
やはり、リテンションのような作業が先天的に得意な方と言うのは存在するようですが、どのようなタイプの方が得意なのか、説明仮説を持ち合わせていいません。しかし、同時に後天的にある程度、すなわちVERSANTで高得点を取れる程度には訓練可能です。なぜなら、鶏の短期記憶容量の私が、VERSANTで71点取れた訳ですから。
シャドーイングはPart2対策として有用か?
ただし、シャドーイングはPart1の対策にて述べたように、「発音」と「流暢さ」を高めるための、総仕上げの段階の対策として非常に有用です。したがって、Part2でも「発音」と「流暢さ」は評価対象なので、リテンションのトレーニングと並行して行えば、大幅な得点アップが期待できるものと思われます。ただし、ある程度の期間は必要となります。
「復唱』(リテンション)向上のための中長期的な対策
リテンションに特化した教材というのは、あまり見かけません。なので、音源とスクリプトがある教材を自身で選択し、VERSANT試験と同様に「音を聞いて再現する」という練習をすることが、得点向上につながります。
おすすめの教材
以下、リテンションの練習材料として、私がお勧めする者をいくつかピックアップします。音源とスクリプトがあることが必須条件です。
TOEICの問題集のPart1とPart2の部分
渋々VERSANTを受験するはめになった皆様は、同様に、かつては渋々TOEICを受験していたに違いありません。その時に購入した対策問題集を捨てていなければ、Part1部分とPart2部分がリテンションを行うのに、文の長さ、難易度等からも丁度いいのではないかと思われます。様々なネイティブ(アメリカン、ブリティッシュ等々)が録音に参加しているのが魅力です。
瞬間英作文
もう説明する必要のないベストセラーシリーズです。文法事項が一通り網羅されている点が魅力です。
NHKラジオ講座
NHKラジオ講座は、私は全て熟知している訳ではないので、ご自身で書店で手にとって、自分のレベルと相性のよいものを選択して下さい。「ラジオ英会話」あたりが適切なレベルではないかと思います。「実践ビジネス英語」をリテンションの練習用に使うとなると、登場人物のセリフが長台詞なので、VERSANTを超えたレベルで取り組みたい方限定で、お勧めです。
ちなみに、リテンションの練習用に使用するだけなので、NHKラジオは4月や10月の開講時を待つ必要はありません。「やらねば」と思ったそのタイミングで、書店に向かって下さい。ちなみにIBooksで音源やテキストを購入することも可能です。
リテンション練習の手順
いたってシンプルです。
②復唱してみる。
③スクリプトを見て、自分の復唱が一言一句間違っていなかったか確認する。
④抜け、誤りがあった箇所には、マーカーをひいておくとよいでしょう。自分の弱点の傾向性が把握できます。
リテンション(復唱)向上のための短期的な速攻戦術
残念ながらあまり有効な策は持ち合わせておりませんが、以下を参考にしてみてください。
集中力を高める
VERSANTスピーキングテストははTOEIC L&Rに比べ時間は大幅に短いものの、集中力を高めて臨むことが重要です。前日の断酒、十分な睡眠、直前の糖分補給、カフェインの摂取等、ご自身にあった集中力の高め方をした上で、受験に臨んでください。
無音シャドーイングの後、復唱する
シャドーイングならできるけど、リテンションはできないという人は、問題文が読まれている際に声を出さずに口だけ動かしてシャドーイングを行い、その後、復唱してみるという方策をトライする価値があるかもしれません。ただし、かえってマイナスに作用する可能性もあるため、練習段階で、この方策が自分にとって有効か否かを必ず確認してみて下さい。
メモ取りはダメ
短期記憶容量の不足をメモによってカバーしたいという誘惑に駆られる方もいるかもしれません。しかし、まずメモ取りは日本語サイトでも禁止と書いているので、違反行為となります。また、一文程度であれば、メモを取ることがかえってマイナスに作用する可能性すらあります。大半の文章は集中して聞けば、再現可能です。
Versantスピーキングテスト対策全般については、下記のまとめページをご覧下さい。