CEFRで比較すると日本人のVersantスコアはTOEICより2段階も下!
CEFRとは
まず、CEFRについてですが、Wikipediaの定義を引用しますと、「ヨーロッパ全体で外国語の学習者の習得状況を示す際に用いられるガイドライン」と記述されています。具体的には6つの学習者のレベルが設置されています。
CEFRを使うと異なる英語資格のレベルが比較可能となる!
様々な英語の資格の点数は、CEFRのバンドという共通の物差しを使用することで、ざっくりとした比較を行うことが可能となります。VERSANTの日本語版のサイトでは、TOEICとVERSANTスピーキングの点数をCEFRのレベルで示す、比較表を提供しています。
私自身についていえば、英検1級取得、TOEIC L&R 980点、VERSANTスピーキング71点なので、全てCEFRではC1のバンドに入ります。私はネイティブスピーカーではなく、海外で生活しながら英語で仕事をした経験はないため、C2では高すぎという感じなので、両テストの結果がC1というバンドに入っていることにしっくりしていました。
日本経済新聞社主催「第1回 VERSANT英語スピーキング・チャレンジ」の結果
ところが、VERSANT日本語版のサイトのこちらから参照可能ですが、日本経済新聞社が受験者にTOEICのスコアを自己申告させることで、「第1回 VERSANT英語スピーキング・チャレンジ」なるキャンペーンイベントを開催した模様です。その結果が、また、下記のように衝撃的な内容でした。
・TOEIC900点台の4割がVERSANTスコア47点以下
TOEIC900点ということは、低めにみても、CEFRのバンドはB2(実務に対応できる者・準上級者)に該当します。ところが、VERSANTスピーキングが51点ということは、CEFRでそれより1つ下のB1(習得しつつある者・中級者)にマップされることとなります。また、VERSANTスピーキングが36ー46点の方は、CEFRではA2(学習を継続中の者・初級者)にマップされてしまいます。TOEIC900点台の4割近くが、VERSANTスピーキングテストでは「学習を継続中の者・初級者」にマッピングされてしまうというのは、説明を要する事態です。以下にいくつかの説明仮説を考えてみたいと思います。
なぜTOEIC高得点者でも、VERSANTスピーキングテストの結果が低いのか?
VERSANTのリスニングで求められる「質」がTOEICよりも高いため
TOEICでは、ビジネスの現場を前提とした内容的に高度な英文が題材となっていますが、4択問題の形式であるため、ディテール(前置詞、冠詞、複数形のs等)まで聞き取れなかったとしても、大きな失点にはつながりません。一方で、VERSANTスピーキングは内容的にはTOEICに比べ容易ではあるものの、細かい要素も含めて全ての語を聞き取れないと、減点が累積していく仕組みとなっています。
つまり、「第1回VERSANTスピーキングチャレンジ」でのVERSANTとTOEICの点数比較を踏まえると、日本人ビジネスマンはディテールの聞き取りに難があるが、推測により意味理解のプロセスを補っていると考えられ、これは今までの私の日本人ビジネスマンの観察に基づく所見とも一致します。
私は両テストの得点の開きを説明する仮説として、求められるリスニングの質が最も妥当な仮説だと思っています。なぜならば、ネット上で「VERSANTは難しい」と呟く受験者の方が多いからです。VERSANTはリスニング能力とスピーキング能力が渾然一体となって評価される試験ですが、スピーキング側に難があるのであれば、感想は「発音の評価が厳しい」だとか、「時間がない」等のものになるはずだからです。「難しい」と感じた方は、入口のリスニングに問題を抱えているはずであり、そのような方は下記の別記事をご参照下さい。
VERSANTでは「短期記憶」の有無が明暗を分ける
TOEICでは膨大な対策本が出版され受験前での対策が進んでいますが、VERSANTスピーキングの問題集等は、少なくとも現時点で私はお目にかかったことがありません。特にPartB「復唱」、PartD「文の構築」、PartE「要約」では、ただ単に聞いて理解するだけではなく、短期記憶という要素が重要となっており、それぞれのPart毎に対策を行う必要があります。それぞれのPart毎の対策を別記事に記しましたので、以下をご参照下さい。
VERSANTスピーキングテスト対策 PartD「文の構築」
ちなみに短期記憶という要素はTOEICのPart3やPart4においても、本来であれば要求されていた能力でした。しかし、ほどんどのTOEIC受験生の日本人は「問題文の先読み」というテクニックにより、短期記憶の負荷を軽減する術を身につけ、そのツケがVERSANTにおいて顕在化したといえるでしょう。なお、PartB, D, Eに必要な短期記憶の質も若干異なりますが、特に難易度が高いPart Eに必要な短期記憶を鍛える方法につき、英語版の解説動画を作成致しました。ほとんどの内容は文字でもご覧いただけますので、リスニングに不安がある方もご覧下さい。
日本人は「カタカナ英語」から脱却できず、「発音」と「流暢さ」の点数が著しく低い
VERSANTスピーキングでは、「発音」と「流暢さ」を合わせて、合計得点の50%のウェイトを占めます。カタカナ英語から脱却する覚悟がない限り、「発音」のスコアの伸びは期待できませんし、「流暢さ」の一要素である「リズム」が改善することも期待できません。「発音」及び「流暢さ」の改善については、大きく2つの方向性が存在すると考えており、下記の別記事にまとめましたのでご参照下さい。
また、上記の別記事の内容は下の解説動画の冒頭のPartAの対策としても述べましたので、読むより動画を見る方がよいという方は、動画の方をご参照下さい。
また、上記動画で述べている方向性として、「発音はある程度捨て、流暢性の向上にフォーカス」するというスコアUPの道を選ぶ場合、発音については最低どの程度を目指すべきかという点について、動画を作成しましたので、ご参考にしてみて下さい。
日経新聞社の主張:「『英語発信力』が低いからVERSANTの点が伸び悩む」は的外れ
日経新聞社はVERSANTの点の低さを「英語発信力」の欠如と分析していますが、私は以下の理由からこの仮説は的外れだと考えています。
①別記事でも説明したように、VERSANTスピーキングの点数はリスニングとスピーキングが渾然一体となって点数化されるため、低スコアの原因がリスニングスキルの不足にあるのか、スピーキングスキルの不足にあるのか、断定できない。
②「英語発信力」という用語は、「相手から英語で言われたことに対して、自分の考えるところを主張する」といったことを指し示しているように受け取れますが、VERSANTスピーキングテストのPartBからPartEは、聞いたことをほぼそのまま繰り返すオウム返しの構成になっており、「オウム返し」と「発信力」は全く異なるものだと思われます。PartFはそもそもAIの自動採点の対象外となっているので、点数を算出する基礎データとなっていません。
これらのポイントは別記事でも述べましたが、同内容の解説動画も作成しましたので、ご関心のある方は動画の方もご覧下さい。
Versantスピーキングテスト対策全般については、下記のまとめページをご覧下さい。