「VERSANT S&Wチャレンジ受験速報」において、6名の方のセクション別の得点が公開されており、極めて興味深く拝見致しました。特長的な点数配分だったのはAさんとCさんで、2人の得点配分を手掛かりに、2つのVersant Speaking Testのスコアアップ方法について、検討してみたいと思います。
「発音」よりも「流暢さ」の改善に力を入れる
VERSANT S&Wチャレンジ受験速報の私大Aさんのスコア
既に私は別記事において、「早期に結果を出すためには、「発音」より「流暢さ」に力を入れる方が得策」と述べていましたが、日経新聞社による「VERSANT S&Wチャレンジ受験速報」に示された私大Aさんのスコアは、正しくそのような戦略に基づいて英語の学習をしたかと思われる結果となっていました。
総合63 文章構文 68 語彙 65 流暢さ 68 発音 48
TOEIC 945
上記のようなAさんのスコアに対する説明仮説については、後に述べたいと思います。
「流暢」だけども「発音」がいまいちってどんな英語?
Aさんにおいては、「流暢さ」のポイントが「発音」を20ポイントも上回っていますが、そのような英語ってどういうものなのか、多くの方に想像がつかないかと思います。
たまたま私は現在、クラシックピアノにはまっていて(「蜜蜂と遠雷」を見た訳ではありませんが)巨匠バレンボイムが若かりし日のランランにレッスンを行うという動画を見ていました。2人の英語は流暢ではあるが、ネイティブの発音ではないという典型例だと思います。ただし、発音のスコアはもちろんAさんよりは遥かに上になると思われます。ピアノにご興味のない方は、つまみ食い的に彼等の英語を聞いていただければ、流暢だけどもネイティブの発音ではない英語がどのようなものであるか、ご理解いただけると思います。
15:50あたりでバレンボイムが「Why don’t you play once more from the...」と言っているのは、「流暢さ」の要素であるリズムも速さも素晴らしいですよね。単に「流暢さ」のサンプルを示すだけなら、他のどこでもよかったのですが、その直後の16:00あたりの下記の発言がプロのピアニストならではの深遠な発言と思えたので、ちょっとご紹介してみたいと思いました。
“Lang Lang, you must believe that you can actually make crescendo on the one note.”
クレッシェンドというのはだんだん音を大きくすることですが、管楽器ならともかく、打鍵により音を出すピアノという楽器で、1音だけでクレッシェンドを行うことは物理的に不可能な訳で、この後聴衆から同様な観点から質問が来ます。でも、それができると信じて弾きなさい、というのは私のようなD級アマチュアには何とも深遠な教えに聞こえます。
Aさんはどのようにして「流暢さ」を大幅に改善したのか?
では、本題に戻って、Aさんはどのようにして「流暢さ」のポイントを「発音」より20点も上回る状態に持っていくことができたのでしょうか?もちろん私はAさんと面識がないので、以下は私の推論というか想像に基づく見解です。
1〜2年程度の留学経験がある
Aさんもピアノの巨匠達と同様に、英語圏で生活をしていた経験が数年あったとすれば、現在流暢に会話がこなせるというのもうなずけます。「発音」が伴わないのは、恐らく留学時期が大学に入ってからか、あるいは高校の1年間とかの時期だからと思われます。より若い時期に海外経験があれば、耳から英語を習得するよりないので、その場合は発音も改善されているはずです。とはいえ、アメリカの大学院でのMBAホルダーでも、Versantの流暢さで68いく人はそれほどいないと思われので、Aさんはかなりの努力をされたのではないかと考えます。
留学には行っていないが、日本で猛勉強した
AさんのTOEICの点数は945ですが、これは大学生としては凄いと思います。大学生が受験するとPart5の文法問題は社会人よりも優位に立てますが、他のリーディング及びリスニングはビジネス経験がないと、瞬時に内容が理解できないことも多々あると思われます。なので、大学在学中でこのTOEICのスコアを叩き出すというのは、大変な努力家であると考えられます。その努力をスピーキングにも振り向けると、このような結果となるのかもしれません。
留学しないでも「流暢さ」をスコアアップする方法
Aさんが留学していなかったとした場合、具体的にどのような勉強をしたのでしょう?おそらく、個々の発音記号はあまり気にせず、でもリンキングやリズムに注力したのではないかと思われます。
例えば、「that it was」をそのままカタカナ読みすれば「ザット イット ワズ」となりますが、リンキングに注意してカタカナ読みすると「ザリワズ」となります。このようにリンキングのみに注力すると、発音はカタカナ読みで伸び悩むものの、英語独特のリズムは保持されるので「流暢さ」は改善されることとなります。
リンキングに特化して解説した本などもありますので、そのような本でリンキングの基本をマスターした上で、シャドーイングを行い練習を積むと、流暢さのポイントは5点くらいは上がるのではないかと思われます。
加えて、出だしの沈黙や思い出すための「アー」とかいう音はVersantでは絶対にNGなので、沈黙と「アー」もなくなれば、併せて10点近くアップするのではないかと期待できます。ただし、出だしに沈黙しないためには、リスニングが完璧でなければなりませんし、「アー」を出なくするためにはリテンションを完璧にしなければなりませんし、そう簡単なことではありません。
「流暢さ」を優先的に改善する場合、「発音」はどのレベルで目標設定すべきか
「流暢さ」の改善に注力し、総合スコアを伸ばすというのは戦略としてありですが、そのような戦略を採用する場合であっても、「発音」はどうでもよいということにはなりません。ほどほどの「発音」を目指す場合の具体的な目標設定に関して、動画を作成しましたので、是非ご覧下さい。
「文章構文」と「語彙」のスコアが相対的に低い場合
VERSANT S&Wチャレンジ受験速報の金融大手Cさんのスコア
一般的な日本人のVersantスピーキングテストの「文章構文」と「語彙」が相対的に高く、「発音」と「流暢さ」が相対的に低い状態となっています。そんな中で、金融大手Cさんのスコアは、日本人の平均像から考えるとかなり異例です。
総合46 文章構文 34 語彙 38 流暢さ 52 発音 61
TOEIC 点数不明
CさんのVersantスピーキングテストでのパフォーマンスは、具体的にどのようなものであったのでしょうか?
「沈黙」時は内容面の評価項目が減点される
Cさんは「文章構文」と「語彙」が他の受験者と比べ圧倒的に低い状況ですが、原因として、PartB以降沈黙する局面が多かったと考えられます。なぜならば、下記のオフィシャルな動画において、沈黙時は内容面の評価項目である「文章構文」と「語彙」が減点されると明確に説明しているからです。
同時に話し方のサブスコアである「発音」と「流暢さ」には大きな影響がないとも回答しています。また、沈黙が半分以上に渡ると「採点不能」と判断されるとも述べています。
従って、CさんはPartAの「音読」できっちりと「発音」と「流暢さ」の点数を稼ぎ、それ以降のセクションでは半分近くの範囲で沈黙する場面があったため、「語彙」と「文章構文」が大きく減点されてしまったと考えられます。
なぜ「発音」がいいのに聞き取れないのか?
リスニング が苦手な方に発音矯正を行うことがしばしばあります。なぜならば、自分で発音できるようになることで、聞き取りも可能となることが多いからです。一方で、Cさんは「発音」は61とかなり高得点ながら、なぜ、リスニングでつまずいてしまうのでしょうか?
速い「スピード」に追いついていけないというのが、考えられる最有力の理由です。初学者向けの教材は、かなりゆったりとしたペースで英語が話されていますが、現実的な局面で教材レベルでゆっくりと話してくれる人はいません。恐らくCさんは初学者向けの教材で学習中で、発音にも留意しながら、英語を学習中の方と推測します。あとはスピードに慣れさえすれば、リスニングも克服でき、流暢さでも得点アップが可能となります。ですから、スピードの克服に注力し一年位猛勉強すれば、AさんのVersant の得点を超えてくることも可能と思います。
いかにしてスピードを克服するか?
では、いかにしてスピードを克服すべきか?CさんはTOEICの受験経験がないようですので、TOEICの公式問題集等を教材としてリスニング力の強化に努めることが有効かと思われます。TOEICの公式問題集の音源を使用してシャドーイングやリテンションのトレーニングを行えば、PartBおよびPartCの得点力はすぐにアップすると思われます。PartDやPartEは独自の対策が必要となりますが、当サイトに対策法が記載されていますので参考にしてみて下さい。
Versantスピーキングテスト対策全般については、下記のまとめページをご覧下さい。