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転職はキャリア上の重大な転機であるということ
転職は誰にとってもキャリア上の重大な転機となります。なぜ現在の会社を去ろうと考えているのか(離職理由)、なぜ新しい会社で働こうと考えているのか(志望動機)、そしてその先にあるキャリアビジョンは何であるのか、という面接官からの問いに対してその場の思いつきで答えていたのでは、必ずや矛盾が生じます。私の経験上、コーポレートブランドが確立されている企業ほど、これらの領域の問いを深く投げかけてきます。
英語面接への準備全般について言えることですが、単に英語の言い回しを考えることよりも、回答すべき内容について事前に深く掘り下げて考えておくことが重要です。そうしておけば、自信に満ちあふれた状態で面談に臨むことができますし、少々の英語上の問題があったとしても、総じて好ましい印象を与えることが可能となります。まずは、キャリアビジョンを考察するにあたって必要不可欠な視点について、以下にご紹介しておきます。
キャリアビジョンを考える3つの視点
これから紹介するキャリアビジョンを考える3つの視点は、神戸大学の金井教授の著作に基づくもので、私もかつて研修講師としてキャリアビジョン研修を担当した際は、この著作に立脚したテキストを作成し、研修に臨んでいました。キャリアビジョンを検討するに際しては、「WILL」「CAN」「MUST」の3つの側面から検討する必要があります。まず3つの個々の要素につき検討した上で、その3つの重なり合うところに、キャリアビジョンを見出すのが理想的です。以下、3つの要素がそれぞれ何を意味するのか、簡単にみておきましょう。
「CAN」
「CAN」は自分のできることを意味し、具体的には知識・経験・コンピテンシーが該当します。経理・IT・研究職等専門性の高い方は、コンピテンシーという視点が抜け落ちていることが多々ありました。当サイトではコンピテンシー面接への対策の記述が豊富にありますので、自身のコンピテンシーの強み・弱みについても、この機会に理解を深めておきましょう。
「WILL」
「WILL」は具体的には「動機」と「価値観」を意味します。「モチベーションが湧かない」という人は多いですが、「あなたの動機の源泉は何ですか」と問うてみると、意外にはっきりとした回答が得られないことが多いものです。自分の動機の源泉が何であるか分からなければ、そもそも「やる気スイッチ」を入れることすらできませんよね。
もし自分の動機が分からないという方がいるなら、モチベーション曲線というものを描いてみることをお勧め致します。横軸を最初に就職してから現在までの時間軸とし、縦軸がモチベーションの高低を表します。「こんな感じかなー」くらいのざっくりとした気分で、思いっきり主観的に描いてみて下さい。そして、曲線ができたなら、なぜ曲線が上げ下げしているのか、言い換えればどのようなタイプの動機が曲線を動かしているのかということを、今度は少し分析的な視点から考察してみて下さい。
ここで一般的に言う「動機」にどんなバリエーションがあるのかご存知ない方も多いと思うので、そのような方は慶應大学大学院の高橋教授のこちらのページを参考にしてみて下さい。以下に代表的な「動機」について、サイトより引用させていただきます。
動機とは、大きく三種類に分かれます。まず一つ目は、「コミットメント系の動機」です。「達成動機」「影響欲」「賞賛欲」「闘争心」などがあります。リーダーになる人には、非常に多い動機です。(中略)
二つ目は、「リレーションシップ系の動機」です。人間関係に関する感情的な部分での動機で、「社交欲」「理解欲」「伝達欲」「感謝欲」などがあります。「相手の気持ちを理解したい」「自分の知っていることを伝えたい」など、コミュニケーションを重視します。(中略)
三つ目は「エンゲージメント系の動機」です。「抽象概念志向」「徹底性」「切迫性」「自己管理欲」などがあります。「なぜそうなるのか」という気持ちが強く、知的好奇心が旺盛です。
引用元: 「個人の動機とキャリア形成」 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授 高橋 俊介氏
また、「CAN」のもう1つの要素である「価値観」ですが、私の研修ではエニアグラム診断を価値観を知るツールとして使用していました。興味のある方は「エニアグラム」「無料診断」等のキーワードで、診断サイトを探してみて下さい。
「MUST」
「MUST」はあなたに期待されていることです。ですから、組織が変われば、そしてポジションが変われば、当然あなたに期待されていることも変わります。そして、「MUST」というのは不変のものではなく、時代の変化・顧客のニーズの変化を通じて変貌を遂げていく、という点にも留意する必要があります。転職においては、新しいポジション・環境で期待されているを知る必要があります。なお、下記の質問のように、自社についてどれだけリサーチしているかを直接的に尋ねられる可能性もあります。
What do you know about this position?
What do you know about our company?
自身の熱意を示すチャンスにもなりますので、応募する企業のHPで企業のミッションや、Job Descriptionをしっかりと読み込んだ上で、自分の理解したことを簡潔に伝えられるようにしおくことが準備として不可欠となります。
また、少し似ている質問として、下記のようなことが問われる可能性もあります。
How did you find out about this job?
この質問の意図の1つは、内部に紹介者等がいるのかを確認することを目的としています。また、後々オファーをするとなった段階で、並行してアプライしているポジションについて、採用側が心配すべきか否かについて、探りを入れる意図があるかもしれません。いずれにせよ、この質問が来たならば、シンプルにどうやって求人を知ったかを伝え、後は面接官の更なる質問を待てばよいと思います。
「WILL」「 CAN」「 MUST」の重なりにキャリアビジョンを見出す
「WILL」「CAN」「MUST」の3つの視点が重なるところに、自身のキャリビジョンを見出せることが理想的です。自分のキャリアと真摯に向かい合っている方ほど、1日のキャリアビジョン研修の時間内に、しっくりとくるキャリアビジョンを見出せることは稀です。
1点補足しておくと、自分の価値観や動機である「WILL」は時間が経過してもほとんど変化しません。そして、顧客からの期待である「MUST」は、外部環境の変化が著しい昨今においては、激変します。「CAN」については、急速に変化する「MUST」を満たせるように、現時点で不足していると考えられる要素を、日々研鑽し広げていく必要があります。
キャリアビジョンそのものをストレートに問う、下記のような質問もよく尋ねられます。じっくりと考え抜いた上で自分でもなっとくのいくビジョンが作れたならば、このような質問を心待ちにするようになることでしょう。
Where do you see your self in 5 years?
What are your career plans?
「離職理由」に関する質問
これは私の個人的な見解ですが、採用面接においてまず重要なのは、①嘘はつかないことと、②先方に伝えたくないことは話さない、の2点だと思います。本音ベースで語れば、離職理由を深く掘り下げれば必ずネガティブな要素に突き当たります。そしてその多くは前職の上司との人間関係に起因するものだと思います。
しかし、前職の上司や企業そのものに対する不満を長々と聴かせれるのは気が滅入るものですし、場合によっては、「難しい人間に対処する」といった対人系のコンピテンシーが欠如している証拠ととられてしまう可能性すらあります。離職理由については、自分の心の中だけに正解があることなので、本当の理由がネガティブなものであれば進んで触れる必要はありません。「自分の実現したいキャリアビジョンに向かうため」というポジティブな動機が存在するのもまた真である訳ですから、離職理由はキャリアビジョンというジャンルに属する質問である、と捉えた上で回答するようにしましょう。
もちろん、家庭の事情で転居が必要等、契約にあたっての条件に関わる理由があるのであれば、それは早めに正直に語れば何の問題もありません。
下記にのリンクからサンプルの回答も見れますので、ご参照下さい。
Job Interview Question: Why Do You Want to Leave Your Current Job?(Plus Sample Answers!)
志望動機に関する質問
キャリアビジョンを土台に回答する
明確な自身のキャリアビジョンに基づいて転職を決意したのであれば、上記のような志望動機に関する質問は「待ってました!」となるはずです。ただし、頭の中で想うことと、それを英語で相手に説明して分かってもらうことは異なりますので、事前にしっかりと準備しておきましょう。
「業界→企業→ポジション」の3段構えで回答を用意する
念のため「なぜこの業界なのか?」「なぜ貴社なのか?」「なぜこのポジションなのか?」という3段構えで回答を用意しておくことをお勧め致します。特に20代後半から30代前半で、日系のメーカー等から外資のコンサルへ転職される方は多いと思われますが、そのような場合、業界や職種も全く異なるものとなるため、働く舞台となる「業界」そのものを変えることについて、しっかりと理由を考えておく必要があります。また「競合他社ではなくなぜ貴社か?」という問いに答えるためには、応募しようとしている企業のリサーチが必要となります。競合他社のホームページも読み込み、「将来性」「風土」「人」等、自分が重要視する項目で比較表等を作っておくと、回答に窮することはなくなります。リサーチの時間こそかかるものの、将来的に絶対に無駄にはならない作業だと思いますので、しっかりと調査をしておきましょう。
「なぜ我々は貴方を採用すべきか」という質問
What value can you bring to the company?
What can you contribute to this company?
Why should we hire you?
こういう質問が来るということを事前に知らないと、恐らく動揺してしまうと思います。私の体験談を申し上げますと、若かりし日に転職活動をしていたときに、中国系の女性のマネージャーから津藤の質問を投げかけられ、面食らってしまった経験があります。「中国系の方ってこういう思考なのかなー」とか、応募していたポジションはコストセンターだったので、「Valueって言われてもなー」という感じで、どう答えてよいやら分からず、適当に受け答えをし、結局その企業では採用につながりませんでした。
その後様々な経験を経た今となってみれば、このような質問はキャリアビジョン一環にあり、少し角度を変えた変化球の質問に過ぎないと、断言すすることができます。応募するポジションにおいて「WILL」「 CAN」「 MUST」の重なるところが何であるのかを熟考すれば、自ずと自身がそのポジションにおいて提供する価値というものの答えが出てくると思います。
一点、追加して考慮に入れるべきは、「他の候補者」という視点でしょう。もちろん、他の候補者の情報はブラックボックスなのですが、「自分は他者に比べてここは負けない自信がある」という点をアピールするとよいと思います。回答のサンプルのリンクもご参考までに下記に紹介しますが、あくまでも自分の想いを大切にして下さい。サンプルの回答を切り貼りして面談に臨むようでは、絶対によい結果は出ません。
+10 Best Answers for Why Should We Hire You?
英語面接対策全般に関しては、下記のページをご参照下さい。